内定(内々定)が出たら、承諾する場合も辞退する場合も返事をしなければなりません。辞退するとなった場合は、伝え方やタイミングに悩む人も多いのではないでしょうか。せっかく期待を込めて内定をくださった相手だからこそ、失礼のないよう誠意のある対応をしたいものです。
採用選考を通してお世話になった企業との関わりも、これが最後。心残りなく締めくくることができるように、内定(内々定)辞退のポイントを確認しましょう。

<できるだけ早く>、<誠意を持って>が最重要

まず、連絡手段は電話が好印象。メールも“エビデンス”として活用を。

ミスマッチ回避や志望企業の優先度を理由に、内定辞退が起こりうることは企業側も少なからず想定しています。とはいえ、企業が抱く内定者への期待は大きいに違いありません。学生のみなさんは、その期待を感じるからこそ、内定辞退に心苦しさを感じるのではないでしょうか。

連絡手段については、企業によって受け止め方に大きく違いがあり「これが正解」と断言できません。「選考途中の辞退ならばメールでも構わないが、入社に関わる重要な用件だから電話で連絡してほしい」という企業もあれば、「内定通知をメールで出しているのだから返事もメールで問題ない」という企業もあります。判断は、それぞれに任される形になりますが、これまでの選考過程のやりとりを踏まえて適当な連絡手段を選びましょう。

社会人のビジネスマナーには<相手に用件を伝えたい時は、連絡を受けた方法で返す>というルールがあります。電話で通知があった場合は、電話で連絡するのがベストです。ただし、電話では記録が残りません。後日改めて内定辞退を申し入れるメールを送り、証明となるものを残しておくと安心です。

内定辞退をメールで申し出た場合も、企業によっては後日電話で連絡をくださるかもしれません。その際は、誠意を持って受け取り、内定をいただいたことに対するお礼や辞退する理由、選考でお世話になったことへのお礼を改めて伝えるようにしましょう。

言葉選びや文面で、伝わり方が大きく変わる

辞退したい理由は、伝え方によってネガティブな指摘になってしまう可能性があります。「~ができない」「~が十分ではない」というような直接的な表現を避けましょう。下の例のように、内定辞退の理由を企業側に結び付けるのではなく、自分自身の意向や希望に引き寄せてみてください。

例)
御社では〇〇ができないから → 自分は〇〇がしたいと考えているから
御社には〇〇がないから → 〇〇のある企業で自分の能力を発揮したいと思ったから

この方法を意識すれば、伝え方のミスを回避できるのではないでしょうか。辞退の理由だけでなく、あなたが悩んだ末に決断したことだということも伝わります。

電話の場合は、事前に伝えたいことをまとめておくことが大切です。電話は、相手の状況や会話のテンポなど、気を配らなければならない要素が増えるため、自分の伝えたいことを伝えるということだけに集中できません。意図とは異なる言葉を口にして誤解を与えてしまったり、伝えたいことが伝えられないまま電話を切ることにならないために、メモを用意して電話をかけましょう。

<電話で内定辞退を伝える際の例>

応募者:
お世話になっております。先日内定の通知をいただきました○○大学の○○と申します。お忙しいところ恐縮ですが、採用担当の◯◯様はいらっしゃいますでしょうか?
(少々お待ちください)
採用担当者:
お電話代わりました。○○です。
応募者:
お世話になっております。内定通知をいただきました○○大学の○○です。ただいまお時間よろしいでしょうか?
採用担当者:
はい。大丈夫です。
応募者:
このたび内定のご連絡をいただきありがとうございました。ご期待を頂きながら大変申し上げにくいのですが、今回の内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。
採用担当者:
そうですか……。差し支えなければ理由を教えていただけますか?
応募者:
はい、他にも選考が進んでいた企業があり、そちらからも内定をいただきました。最後まで悩みましたが自分の適性や今後のキャリアなどを改めて考えた結果、そちらの企業に入社することが良い選択だと思い、このような決断をいたしました。
採用担当者:
そうですか。大変残念ですが、承知しました。
応募者:
本来ならば、直接おわびに伺うべきところですが、お電話でのご連絡となり申し訳ありません。
採用担当者:
いえいえ、お電話いただきありがとうございました。他社でもご活躍を期待しています。頑張ってくださいね。
応募者:
ありがとうございます。貴重なお時間をいただきながら、このような形になってしまい申し訳ありませんでした。失礼いたします。

<メールで内定辞退を伝える際の例>

件名:内定辞退のご連絡/氏名

本文:
株式会社○○○(企業名)
人事部(部署名) ○○様(担当者名)

大変お世話になっております。
○○大学・□□学部・○○学科の○○○○(自分の氏名)です。

このたびは内定のご連絡をいただきありがとうございました。
ありがたいお知らせをいただきながら大変恐縮ですが、貴社の内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。
自分の今後のキャリアについてあらためて考え、最後まで悩みましたが、別の企業へ入社することを決意いたしました。
選考で貴重なお時間を割いていただいたにもかかわらず、このようなご連絡となり大変申し訳ございません。
また、本来であれば貴社へお伺いし、直接お詫びをするべきところではございますが、メールでのご連絡になりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。

末筆ながら、貴社の益々の発展をお祈り申し上げます。

──────────────────
○○○○(自分の氏名)
○○大学・□□学部・○○学科 △年
090-××××-××××(携帯電話番号)
○○@××.××.jp(メールアドレス)
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<いつまでに?>決断したらできるだけ早く

入社後の早期離職につながっては双方にとってメリットはありませんから、内定辞退そのものはルール違反ではありません。

法律に照らし合わせると、労働者はいつでも労働契約の解約を申し出ることができ、解約の意思表示をした日から2週間たてば解約は成立すると明記されています。ただしこれはあくまで法的なもの。実際は、内定通知の連絡があった日から1週間を目安に返事をしたいところです。できない場合は、まず自分で期限を決め、それまで待ってもらえるかどうかを企業に相談するのがよいでしょう。企業は内定辞退が出た場合、改めて選考を見直し、欠員を補充するなどの対応をしていかなければなりません。また内定通知後は、入社日に向けて準備が進みます。内定を辞退したい場合は、できるだけ早く伝えましょう。

<最後に>決断に自信を持とう!

連絡の仕方は分かっても、「考え直してほしい」と引き止められたり、理由を深く聞かれることがあるかもしれないと思うと、不安は払しょくできないかもしれません。見失わないようにしたいのは、内定を辞退することは、自分の将来のために考え抜いた前向きな結論だということです。返事をする前に「なぜ辞退するのか」と「今後どのようにしたいと考えているのか」を明確にして、自分の決断に自信をつけることです。あなたの言葉を通して、採用担当者は熟考した上の結論なのだと受け止めてくれるでしょう。