
目次
なぜ企業研究が「意味ない」と感じてしまうのか
まず企業研究に意味がないと感じてしまう理由について、考えてみましょう。
就活生がぶつかる3つの壁
「どれだけ企業研究を進めても、各企業の違いが見えてこない」「企業研究に時間を割いても、意味がないように思える」などの悩みを抱える学生は少なくありません。こういった状況には、「大量の情報を得たことによる混乱状態」「時間を無駄にしているのではないかという不安」「内面的な情報が得られない焦り」といった3つの壁が関係しています。
- 大量の情報を得たことによる混乱状態:
企業研究を行えば行うほど、どの企業も同じに見えてくる - 時間を無駄にしているのではないかという不安:
企業研究に時間がかかり、ほかの対策に時間を使えない - 内面的な情報が得られない焦り:
企業研究をしても本当に欲しい情報が手に入らない
このような経験がある人も多いのではないでしょうか。しかし、これらの課題点はいずれも十分に解決可能です。今回の記事で紹介する企業研究の秘訣や具体的な方法を参考にすることで、3つの壁を乗り越えることができますよ。
従来の企業研究の問題点
これまでに取り組んできた企業研究に効果が感じられないなら、どのような問題点が隠されているのか理解する必要があります。具体的なミスでいうと、「企業の公式サイトを閲覧するだけで、深堀りしようとしない」「情報をまとめる行為に時間をかけすぎてしまう」などが例に挙げられるでしょう。
しかし、サイトの閲覧のみで企業研究を終わらせても各企業との大きな相違点は見えてきません。情報をまとめる行為に時間をかけても、企業の内面的な情報は手に入らないでしょう。正しい方法で情報を収集したり、企業研究で力を入れるべきポイントを理解したりすることで、これらの問題点は改善できます。具体的な方法は次以降の見出しで説明するので、ぜひ参考にしてください。
企業研究をしないことで起こる3つの致命的な失敗
中身が伴っていない企業研究だけでなく、そもそも「企業研究をしない」場合も大きな問題点が発生します。ここでは、企業研究をしないことによって起こる失敗を3つ紹介します。
面接での致命的な失点
企業研究をしていないと、面接官から「入社意欲が少ない学生に思える」と評価されてしまいます。入社を志望しているなら知っておいて当然な事業内容や今後の展望などを答えられず、面接に落ちてしまうというケースが多いです。そのため、企業の公式サイトに書かれていることは最低限でも目を通すことが求められます。
入社後のミスマッチ
厚生労働省のデータによると、2021年3月に卒業した新規学卒就職者のうち、就職後3年以内に離職した人の割合は38.4%(新規高卒就職者)、34.9%(新規大学卒就職者)という結果が出ています。
参照:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」
こうした早期離職の原因であるミスマッチの例としては、「希望していた業務を担当させてもらえなかった」「社内の雰囲気が自分に合っていなかった」などが例に挙げられます。
早期離職は新卒カードを無駄にしてしまうおそれがあるため、学生側としてもなるべく避けたいところです。正しい方法で企業研究を実施することでミスマッチは防げるので、しっかりと取り組みましょう。
志望動機が説得力不足になる
企業研究を踏まえていない志望動機は説得力に欠けるため、人事担当者から「ほかの企業でも問題ないのではないか」と思われる可能性が高いです。志望動機全体が、どんな企業でも使いまわせる内容になってしまうことが原因だと思われます。
企業研究の成果を志望動機に盛り込み、その企業だからこそ書ける内容を意識しなければなりません。
成功する就活生が実践している企業研究の秘訣
それでは、就活に成功した学生たちが実際に行ってきた企業研究にはどんな秘密が隠されているのでしょうか。
内定者の効果的な情報収集法
内定につながる情報を収集するためには、「1社あたりに時間を使いすぎないこと」「志望順位が高い企業から取り掛かること」などに気を配るといいでしょう。
【おすすめの情報源】
- 企業の公式サイト
- 就職情報サイト
- 業界地図
- 企業説明会での質疑応答
- OB・OG訪問
情報収集の際は「得た情報をうまくまとめられない」という点につまずきやすいので、企業風土・業界内の位置・今後の展望など細かな種類に分けて情報をまとめるように気をつけてください。
人事が評価する企業理解とは
企業の担当者が好印象を持ちやすいのは、「企業側がどんな人物像を求めているかを理解している学生」です。そのため、企業研究を通して企業側が求める人物像をはっきりさせる必要があります。
たとえば、面接で自分の長所をたずねられた際、企業が「今後海外事業で活躍できる学生」を求めていることを把握したうえで「外国語が堪能なことと、外国人とも問題なく会話できるコミュニケーション能力の高さが自分の長所です」と回答すれば、高評価をねらえるでしょう。
ただし、企業側が求める人物像に沿わせることを優先しすぎて、嘘をつくことは避けましょう。結果的に、自分に合った企業から内定が得られないという事態につながってしまいます。企業研究は、あくまで「自分に合った企業を探すこと」を目的に行うことを忘れてはいけません。
業界研究との上手な組み合わせ方
企業研究と同じくらい重要な就活準備が、志望業界について詳しく調べる業界研究です。企業研究と異なり、より大きな視野を持ちながら「広く、浅く」調べることが求められます。
そんな業界研究と企業研究をうまく組み合わせることで、より高い効果を得られることもあります。「業界研究→企業研究」 の2ステップで対策を進めることが具体的な例です。
①業界研究
まずは業界研究によって、志望業界全体のおおまかな知識を得ます。具体的な企業群、市場規模、主流のビジネスモデル、この業界に身を置くことのメリットとデメリット、今後の将来性などについてリサーチし、得た情報をまとめてください。
②企業研究
業界研究を通して、今後の就活対策で軸となる知識を得られたら、次は企業研究でより深い情報を集めます。この流れに沿うことで漏れのない情報収集ができ、実際の対策で効果が得やすくなるでしょう。
企業研究の具体的な方法は、次の見出しで詳しく説明していきます。
効率的な企業研究の3ステップ
ここからは、より効率よく効果が出せる企業研究の方法を解説していきます。
基本情報を押さえる
まず、企業研究を通して必ず調べておきたい基本情報をリストにまとめます。だいたい1社あたり20分~1時間ほどの時間を使って作成しましょう。
【企業研究のチェックリスト】
- 企業名
- 事業内容
- 業種、職種
- 設立年
- 代表者
- 売上高
- 企業理念
- 求める人物像
- 設立~現在までの簡単な歴史
- 社是
- 従業員数
- 従業員の平均年齢
これらについて調べる際は、複数の情報源を使用し、その特徴を活かすことが大切です。たとえば、企業の公式サイトを使うなら「企業設立の歴史について詳しい情報を得る」、企業説明会での質疑応答なら「求める人物像の詳細について理解を深める」などが主な例です。
なお、その企業の志望度に合わせて、「どの程度まで情報を調べるか」を調整するといいでしょう。どの企業も「事業内容」「売上高」「求める人物像」などの情報は調べる必要がありますが、そこまで志望度が高くない企業なら、設立以降の歴史や従業員別の詳しいデータなどに時間を使いすぎる必要はありません。
企業の実態を理解する
各企業の基本情報を押さえられたら、次はその企業の実態について分析し、詳しく紐解いていきます。
【企業の実態について分析するコツ】
- ほかの企業にはない独自性を見極める
- メディアなどで注目されている点をクローズアップする
- 口コミサイトなども合わせてチェックし、働きやすさを確認する
上記のコツのうち、特に重要なのは1個目で紹介した「独自性の見極め」です。たとえば「AIの活用を重視している」という企業の情報が得られた場合、ほかの企業のデータと比較し、その企業ならではの特徴であるかを分析します。もしその企業特有のポイントなら、それを面接などの対策に取り入れるといいでしょう。
また、この際に見落としがちなのは「大企業と中小企業・ベンチャー企業を単純に比較してしまう」という点です。たとえば、中小企業Aより大企業Bのほうが大規模な事業を展開しているとして企業を分析するのは間違いではありません。
しかし、「そもそもの企業資本が違う中でどのような工夫をしているか」という観点を失った状態でどちらがより良い企業なのか判断するのは好ましくありませんよね。各企業の要素を冷静に見つつ、落ち着いた目線で分析するように気を付けましょう。
差別化ポイントを見つける
企業について深く分析したあとは、「今後の対策で何に力を入れれば、まわりの学生と差別化できるのか」と考えましょう。
たとえば、分析後「他社と比べてSDGsに特化した事業を展開しており、社会貢献活動にも多くのリソースを割いている企業である」という結果が出た場合を例に出します。この場合はSDGsや社会貢献への実績を強くアピールすることが高評価→学生内での差別化につながるため、今後の対策に活かすようにしましょう。
なお、面接では、しっかりと企業研究を実施したことを企業側に伝えられるように意識してください。「企業研究によって、貴社の独自性は〇〇だと理解したのですが~」などと述べることで、他の学生よりもより良い印象を与えられるはずです。
ちなみに、よくある差別化の失敗としては、「どれだけ企業研究を頑張ったか」というやる気の面で差別化しようとするケースが例に挙げられます。頑張っていることはどの学生も同じなので、「より質の高い企業研究を実施し、それを対策に反映していること」をアピールしてください。
企業研究を面接で活かすテクニック

こうして実施してきた企業研究を実際の面接で活用するために、「企業側からの質問にうまく回答する」「自己PRと内容を結び付ける」というテクニックをおすすめします。質の高い企業研究がある程度できるようになったら、これらのテクニックを取り入れてみましょう。
質問への効果的な回答方法
企業からの質問にうまく回答し、高評価を得るには「企業研究を踏まえた”軸”を回答の中に据えること」が大切です。
たとえば、「どんな社会人になりたいか」という質問に答えるケースを考えてみましょう。企業研究によって得られた「創業から続く歴史の継承を重視する企業」という結果を踏まえ、「貴社の歴史を受け継ぎ、さらに未来に向けて技術を発展できる社会人になりたい」といった回答を返せば、好印象につながるはずです。
もしこの質問に「これまでの歴史を守ることよりも、新規性の高い事業の拡大に力を入れたい」と答えていたら、企業と学生の間にミスマッチが生じるとして内定獲得は難しくなるかもしれません。
企業側は「企業研究の質を確認し、全学生の中でよりレベルが高い学生を採用したい」という意図をもって質問してきます。そのため、企業研究の内容をしっかりと取り入れた回答になるよう、常に意識して言葉を発することが重要です。
なお、質問に回答する際は、 STAR形式を意識するとより印象が良くなるでしょう。 STAR形式とは、「Situation(状況)」「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(結果)」に沿って内容を説明することで、過不足なく質問に回答できるという裏技です。うまく回答が作れない人は、この流れに沿って回答する癖をつけてみましょう。
自己PRとの結びつけ方
自己PRの内容に企業研究の結果を結び付けることで、他の学生にはない自分らしさをアピールしつつ、「準備に時間をかけている→入社意欲が高い」という点を伝えることができます。
【自己PRと企業研究を結び付ける例】
- 新しい技術の開発に力を入れる企業
→自己PRで「新たな技術開発に使える専門知識を学んできたこと」をアピールする - 若い社員の活躍が著しい企業
→自己PRで「大学時代に得た経験をそのまま即戦力として活かせること」をアピールする
こうして企業研究に関連する情報を自己PRに盛り込むことで、回答全体で一貫性のあるストーリーを意識することができ、説得力も高められます。
なお、面接官を担当する企業担当者の印象に残りやすくするため、「個性的なキャッチフレーズを使いながら自己PRする」「人があまり経験していないエピソードを使って自己PRを進める」などに気を付けることもおすすめしますよ。
まとめ:明日からできる、本当に意味のある企業研究とは
中身の充実した企業研究を行うことで結果を出すには、これまでの企業研究の問題点を振り返り、正しい方法について学ぶことが大切です。まずは、業界研究を一通り実施してから、今回紹介したチェックポイントに沿った企業研究を行うようにしましょう。
「意味のある企業研究に取り組みたい」と感じてからすぐに行動すれば、内定獲得につながる日はそう遠くありません。前向きな気持ちを持ちながら、企業研究を始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
ここでは補足情報として、企業研究に関するよくある質問を4つ紹介します。
Q1: 企業研究はいつから始めるべきですか?
企業研究は、なるべく早くに始めたほうがいいでしょう。具体的に言うと、大学3年生の夏頃には始めておくと余裕を持って準備に取り組めるはずです。
Q2: 企業研究と業界研究の違いは何ですか?
企業研究は、1つの企業を専門的に調べ上げます。これに対して業界研究は、業界全体のおおまかな情報を把握するために実施するという違いがあります。
Q3: 効率的に企業研究を進めるコツはありますか?
1社あたりの企業研究にかかる時間は20分~1時間ほどであるため、スキマ時間を活用しながらなるべく多くの企業について調べることをおすすめします。
Q4: 企業研究で最低限おさえるべきポイントは?
企業名や代表者といった基本データ、具体的な事業内容、学生に求めるもの(人物像)については、どの企業もリサーチするようにしましょう。